家のメンテナンスはお金がかかる。できるだけ長持ちする家は作れないのか?
「地震で倒れない家」「暖かい家」はどうやったら作れるか考えたところで、今度は「長持ちする家」について考えてみた。
家を建てるのにはお金がかかる!
ウン百万、ウン千万とかかる。
そして、さらに、よく聞くのが、家のメンテナンスにかかるお金。
お金をためてローンを組んでやっと家を建てたて、ほっとしたのもつかの間、
あっという間に5年、10年と時間がたち、今度は家の修繕が待っている。
住宅金融公庫が、住まいのメンテナンスについて、「マイホーム維持管理ガイドライン」を作成しているので見てみよう。
(下表)
(※屋内部分、建具、設備関連については割愛)
これを見ると、外壁は15~20年で全面補修、屋根はものによって10~15年、20~30年で全面葺き替え、バルコニーも10~20年、床組は20~30年、防腐.防蟻処理は、5~10年で・・
壁や柱、天井、階段なども、10~15年で要点検、不具合あれば修繕要。
特にお金がかかるのが、外壁、屋根の修繕で、100万~200万くらいはかかってくるだろう。
新築~築30年のうちに、家全体の修繕のために、500万~1000万の費用がかかるといわれている。
でも、ちょっと待った。変じゃないか? 日本の住宅事情。
ヨーロッパの家って、古い家がたくさんあるじゃないか!
そうだよ。そうだよ。
じゃぁ、ヨーロッパの家と日本の家、何が違うんだろう?
ヨーロッパの家は100年持つのに、なぜ日本の家は寿命30年???
ヨーロッパの街並みを思い出すと、古い家が立ち並び趣が感じられる。
ヨーロッパの家は、何百年も住み続けられるものも少なくない。
2010年に国土交通省が発表したデータによると、日本の住宅の平均寿命30年に対し、アメリカは55年、イギリスは77年だ。
でも考えてみれば、日本の寺社の中には、何百年も風雨や災害に耐えてきたものもある。
日本の伝統的な木造工法の家が、ヨーロッパの家に劣るというわけでもあるまい。
ヨーロッパでは石やレンガの家。日本では木の家。
それぞれの風土に合った材料を用いて、長持ちする家は昔から作られていたのに、なぜ、日本の家は短命になってしまったのか?
日本の家が変わったのは、戦後のことだ。
「東洋の奇跡」と呼ばれた高度経済成長期に、日本社会は急速な発展と変化を経験してきた。
都市の人口は急速に膨れ上がり、人々の住む家が足りない。都会は新築ラッシュ。
そんな中、ハウスメーカーたちはこぞって「「早く、安く、大量に」家を建て始めた。
それまで、家というものは、日本の木材を用いて、木材のことを知り尽くした大工さんが、手間と時間をかけて作るものだったが、
戦後は、時間をかけて仕上げる国産木材より、安価に手に入る「新建材」(化学合成品で作られた建材)が主流になった。
柱や梁などの構造部分に、木をボンドで貼り付けた「集成材」を使用し、内装には、ビニールクロスや、合板フローリング。
家具や建築資材、壁紙を貼る為の接着剤などに含まれている化学物質の一つ「ホルムアルデヒト」の健康被害が後に問題になったが、
戦後の「新建材」の台頭は、日本の住宅業界にも大きなデメリットをもたらした。
「新建材」は、木材に比べて耐用年数が短いのだ。
今、日本の新築住宅の外壁材として多く利用されている「サイディング」がいい例だ。
家の外壁材として近年人気があり、また数多く利用されているのが「窯業系サイディング」。
セメントと繊維質や無機物を混ぜて板状に成形し、養生・硬化させた外壁材だ。
下のグラフを見ればわかるが、戸建住宅市場において、窯業系サイディングは圧倒的なシェアとなっている。
「窯業系サイディング」が好まれるのは「安価。きれい。早い。簡単。」だから。
<窯業系サイディングのメリット>
- ・工場での大量生産が可能で、品質も安定している。
- ・木目調・ストライプ柄・レンガ風・タイル柄・・・とデザイン豊富
- ・施工が簡単なため、工期の短縮・施工費の削減が可能
- ・重量が軽く、耐震性、耐火性に優れている
メリットは大きいが、しかし、長持ちはしないのだ。
そして、メンテナンスにはお金がかかります。
日本の家の中は「木」に見える「まがいもの」だらけ?
日本の家は木でつくるものだったのに、実は、今多くの日本の家の中で、本物の木を使っている部分はごくわずかになっている。
「木」に見えても、合板(べニア板)に、木目のプリント(!)ってこと、実は多いのだ!
家具もしかり。
森林国、日本において、一般の住宅の中に「木」はほとんどなくて、「木目」をプリントした「木材まがい」の建材に囲まれて暮らしている人が
どんなに多いことか!
すごく変だ。
木は本来長持ちするものだ。
なのに、それをうまく利用せず「新建材」を多用しているということが、
日本の家の寿命の短さの原因のひとつでしょう。
「壊れたら買い換える、作り変える」~それって、メーカーの利益のため??
ふと思い当たったのは、日本では「電化製品がすぐ壊れる」ということ。
精密な機械だから壊れやすいのかな、と素人考えには思うけれど、
メーカーが「家電のライフサイクルをコントロールしている」という話は聞いたことがないだろうか?
つまり、メーカーが製品の寿命(=壊れるまでの年数)を決めているということ。
家電の寿命は大体6年~10年くらいといわれている。
でも、世界最高水準の技術力をもった日本の優れたメーカーなら、
「いつまでも壊れない家電」とか、せめて「20年くらいは壊れない家電」を作ることもできるんじゃないの?
と思うけれど、そんなことをうたっている製品は皆無だし、
メーカー自体、商品の耐久性を高めるための研究開発なんて、そもそもしていないだろう。
だって、いつまででも壊れないと買い換えてもらえないですもんね。
メーカーは商品を売ってこそ利益が出るんだから、そもそも
「ある程度使ったら壊れる商品」を作るだろうという話は納得できる。
それも、特に日本のメーカーがそうなんじゃないのかなぁ・・
日本では、家電の保証期間は1年が普通だが、欧州などでは製品によって保証期間が2~3年、長いと5年というようなものもある。
いいように考えれば、メーカーは、「安全」のため、
ある時期に家電が「安全に確実に壊れる設計」をしているという話もある。
耐久性が高い商品でも、きっといつか壊れる可能性は高いが、
それが、20年後、30年後だと、メーカーは「壊れ方」の想定ができず、思わぬ事故につながる可能性もある。
そうなると、メーカーの信頼はガタ落ち、メーカーの死活問題だ。
それを避けるために、製品寿命を「安全に壊すための設計をしている」ということ。
「安全のための製品寿命コントロール」という大義名分に乗じて、必要以上に製品の寿命を短くしている
なんてこと、あるんじゃないでしょうか。
あ、車も? スマホも、アイフォンも?
家も同じ?
家だって、「いつまででも壊れない丈夫な家」より、メンテナンスが必要になるようにつくっておいて
10年、15年後にリフォーム、修理・修繕をしてもらったほうが、メーカーや工務店の利益になるんだから・・
そういうこと、実際にあると思う。
経済活動の維持、発展のためには、「買い替え」「作り替え」はある程度必要なことなのもかもしれないけれど、
それが、必要以上に「恣意的」になっていないことを願いたい。
スウェーデンは、「買い換えなくてもいい世界」を目指している!
充実した社会保障で知られるスウェーデンはでは、2016年、モノの修理に対する「付加価値税(日本の消費税と同じく、モノやサービにかかる税金)を約半額にする政府予算案が提出された。
「モノを新しく買う」より、「修理して使う」ほうが、税法上優遇されるというわけだ。
環境・社会・経済の3つの観点からこの世の中を持続可能にしていくという考え方、
”サステナビリティ”(持続可能な)社会の実現のための取組みは、欧州中心に大きな拡がりをみせているが、
特にスウェーデンは、国をあげてこの「サスティなブルな社会」の実現を目指している。
「モノを大切に使う」ことは、持続可能な社会の実現のために必要なことだ。
ということを国や企業が強く意識しているのだ。
世界的にいっても、まだまだスウェーデンような考え方の国は少なく、多くの国では企業の利益を優先する「使い捨て文化」のほうが主流だし、
特に日本ではその傾向が強いんじゃないかと思う。
「家電は壊れるもの」
「家はダメになるもの」
という、多くの人たちが思い込んでいるこの常識は、本当は、少し変なのかもしれないよ。
それを疑問に思ったら、やっぱり、
できるだけ「長く持つ家」を建てたいな。と思った。